『全感覚』10号に寄稿
既にSNSで告知してから時間がたってしまいましたが、Taxxakaさんの発行されている冊子『全感覚』10号に、Taxxaka作品についての文章を寄稿しています。「たまごとその殻」というタイトルです。購入は池袋のコ本やさん、模索舎さん、NADiffなど。
Taxxaka作品に見られる「青年性」をヘーゲルなどを参照しながら考えました。僕は決してTaxxakaさんの作品を長く見てきたわけではない(というよりも昨年初めて見た)ので、果たして自分がTaxxaka論を書くのにふさわしいかは悩んだのですが、たまたま初めて見たTaxxakaさんの個展が過去作も含めたものだったので、これならば可能性がある、と考えました。
僕はTwitterでTaxxakaさんのことはお見掛けしていたのですが、てっきりもっとお若い方かと思っていました。徐々にそうでもないのかな?と気づき始めたのですが、昨年展示を見て、その10代的な(!)感性とTaxxakaさんの実年齢のギャップに驚いたことが執筆動機になっています。
何をいきなりヘーゲルかと思われると思いますが、もともとは柄谷行人と吉本隆明の対談に、類似の問題が出てくるのですね(『ダイアローグ〈1〉(1970~1979)』第三文明社、1987年所収「批評家の生と死」)。
ここで若き柄谷は年長の吉本に対して、夏目漱石をひきながら、生物的な年齢(実年齢)と、作品を構成する精神の年齢の一致あるいはギャップについて話しています。そして、端的に吉本の初期作を評価しながら、「抽象化」した吉本の「理論的」仕事に、初期の切迫性がないんじゃないかと批判している。そこでヘーゲルが出てくるわけです。このヘーゲルを参照し直しました。改めて読むとヘーゲル面白いですねぇ。けっこう無茶苦茶言ってますが、妙に納得がいくところもある。
あと、今回触れられなかったことがありまして、実は僕はTaxxakaさんのお仕事をずいぶん前に知っていました。かつてTaxxakaさんが発刊されていた冊子「appel」の4号、椹木野衣さんへのインタビューをTaxxakaさんがされているものを購入し読んでいました。
再販されたものだったので初版ではないのですが、購入場所は覚えていてオペラシティギャラリー前のショップ「ギャラリー5」です。
不思議なご縁だなと驚いたのですが、Taxxakaさんが、長く実作とインディペンデントな出版活動をされていることに、共感したことはここに記しておきたいと思います。
あと、ここで告知できていませんでしたが、昨年末からART TRACEと共同で「私的占領、絵画の論理」という画家の方とのトーク企画を始めています。初回は五月女哲平さんとお話ししました。タイミング逃しましたので、二回目が近づいたら改めてこちらで記事を書きます。
なお、下の書影はTaxxakaさんから頂きました。ありがとうございます。